旅ができない=仕事ができない…こともなかった!? トラベルライターのSHIORIさんが移住先の長野県で見つけたニューノーマルな生き方

トップ画像:リゾートホテル蓼科 彫刻公園で

みなさん、旅はお好きですか?

コロナ禍以前は、まとまった休みに海外へ行ったり、週末に温泉旅行へ行ったりと、息抜きや趣味として旅をする方も多かったのではないでしょうか。

実は、そんな旅を仕事にしている方がいます。トラベルライターのSHIORIさんです。SHIORIさんはこれまで、旅をテーマに様々なメディアで執筆をしてきました。しかし、コロナ禍で旅に行けなくなったのです。そんななか結婚し妊娠も分かったSHIORIさんは、2020年9月に神奈川県から長野県長野市に移住しました。

「今は仕事のしかたも変えて、ストレスフリーで、そんなに頑張らなくてもいいのかな〜って思いますね!」とSHIORIさんは話します。

そんなニューノーマルな生き方にたどり着くのにはどんなストーリーがあったのでしょうか。


人生設計になかった“移住”は、いまの私にとって最善の選択肢だった

フィリピン ボラカイ島にて

そもそも、移住するって大きな決断だよな…と思ったので、移住を決めるまでのいきさつを聞いてみました。

「旦那さんが長野市の出身で税理士の仕事をしてるんですけど、地元に来てほしいって言われたんですね。地元の長野が好きな人だったので、なるべく離れたくないようで。でも、すぐに移住!とはならなくて。私がけっこう粘ったというか渋ってて、間をとって大宮にしようか?みたいな話も出たんですけど(笑)」

なかなか移住の決断ができなかったSHIORIさん。それには、トラベルライターならではの理由がありました。

「執筆するだけならどこでもできるんです。だけどクライアントは東京に集中してるし、政府観光局への顔出しや、PR会社との打ち合わせ、出版社やメディア編集部への訪問など、実際に会って仕事をするシーンも多かったので、首都圏にいる方が仕事をしやすいし、仕事の機会損失も大きくなるなと思いました。それに、自分を売り込むのは直接会わないと難しいので。あとは、旅に出るのも空港が近い方がよかったので、移住っていう選択肢が私の中にまったくなかったんです。」

移住は人生設計になかったというSHIORIさん。悩んでいるうちにコロナは拡大し、旅にはまったく行けない状態に。最終的に移住の決め手になったのは、お子さんのことでした。

「ちょうど妊娠が分かって、キャリアもストップするなって思ったときに、一旦この時期に休んで、子育てに集中していく時期だって言われてるような気がしたんですね。それに、この状況で東京に住み続けるのは現実的じゃないかもしれないって思って…。生まれてくる子どもがのびのびと暮らせるかって考えたときに、そうじゃないって感じて、だったら移住しちゃってもいいかなって思うようになりましたね。」


移住して初めて知った長野県の魅力 気軽に四季を楽しめるスポットの宝庫

蓼科 雨境峠で

静岡県浜松市出身のSHIORIさん。スキーや温泉を目的に家族で遊びに来たこともあったそうですが、移住してみてすてきな発見がたくさんあったそうです。

「“自然が豊かな場所”ぐらいのイメージしかなかったんですけど、移住してみて、土日どこか行きたいな〜と思ったときに、気軽に行ける観光地がいっぱいあるなと思いました。白馬とか蓼科とか戸隠とか…。そのどれもが、四季ごとに違った景色が楽しめて、遊ぶのにネタが尽きないって感じですね。山もすごい綺麗だし、自然の中で空気を吸うのが気持ちいいです!夏もクーラーみたいな人工の涼しさじゃなくて、自然の涼しさを味わえるのが魅力です!海がないのは寂しいですけど(笑)」

一方で困ったこともあったそうで…

「“このブランドのこの洋服ほしいな”って思ったときに、生活圏内に店舗がないのはよくありますね。東京みたいにどこにも店があるわけじゃないので、ウィンドウショッピングの習慣はなくなりました(笑)あとは、コロナ禍で人の集まりがないし、子育てでずっと家にいるので、ここからどうやって人脈を広げていこうかな〜とは思ってますね。」

そんななか、長野県の県民性を感じたできごともありました。

「人それぞれだとは思うんですけど、気のいい人とかやさしい人が多いな〜と思います。旦那さんのクライアントで農家の方が多くいるんですけど、果物とかたくさんいただきましたね。桃とかシャインマスカットとかすいかとか…りんごは尽きたことないですし(笑)すごく嬉しかったです!!」


長野県ならではの文化・習慣に大混乱!? 地元の常識を日々勉強中

戸隠での1枚

移住して約1年、思いもよらないハプニングもあったそうです…

「義理の父が畑をやってて、ピーマンをたくさんもらったんですね。あとで分かったんですけどぼたんこしょう(※1)が混ざってたんですよ。全然知らずに、ピーマンだと思って切った後に目をこすったらめっちゃ痛くて!パンパンに腫れちゃって。野菜を見分ける能力の必要性を感じました(笑)あとは、ほうれん草にアブラムシがついてることに気づかずに新聞紙にくるんで放っておいたら、次の日アブラムシが大量に散らばってたときはびっくりしました(笑)」

※1…ぼたごしょうとも呼ばれる信州の伝統野菜。見た目はピーマンに似ているがトウガラシの仲間。焼いても炒めても揚げても美味しくいただける。

移住の洗礼を受けたSHIORIさん。ほかにも謎めいている部分は多いようです。

「雪かきの文化には驚きました!朝5時くらいに音がするなって思ったら、みんな雪かきしてて…私もしなきゃいけないのかっていう…今までしたことなかったので(笑)あと、無言清掃(※2)の文化があるっていうのを最近テレビで知って…そういう地元の常識を知らないので、今後子育てに響かないといいな〜って思ったりします。」

※2…長野県内の多くの小中学校で行われている習慣。しゃべらず黙々と掃除を行う。


旅が楽しいのは帰る場所があるから これからは帰る場所を一番大事にしたい

豪パース ピナクルズ

結婚・妊娠というライフステージの変化とコロナ禍を経験し、“人生を通して大事にしていくもの”について考えたそうです。

「今までは、旅で得られる刺激とか出会いとかを求めてたんですよね。トラベルライターでいる以上結婚できなくてもしょうがないかな〜とかも思ってて。でもあるとき、“旅が楽しいのって帰る場所があるからだ”って思ったんですよ。それで帰る場所を大事したいって思ったし、家族や日常を大事にするのって人として大事なことだなって思うようになりました。」

SHIORIさんには、子育てについても思うところがありました。

「人生の中で、子育ては経験してみたかったんですよね。人をひとり育てるのって1番難しいことなんじゃないかなって思っていて、そこで見えてくる世界も今までとはきっとぜんぜん違うし、それもある種旅みたいなものかなって思ってますね。」

価値観が変わったSHIORIさん。仕事面のスタンスも大きく変えたそうです。

「今までは“海外の魅力を日本人に伝える”ことをメインにやってたんですけど、これからは今までの経験を生かして、コロナ禍で困ってる国内の観光地とか自治体にスポットライトが当たるような貢献性の高い仕事がしたいなって思ってます。」

“海外の魅力を伝える”から“日本の魅力を伝える”にシフトするというSHIORIさん。きっかけになったエピソードを教えてくれました。

「2019年の12月にオーストラリアのパースに取材に行ったんですよ。そしたら地元の人が、住んでる場所の歴史をすごい大事にしてるのを知ったんですね。日本だと新しいマンションの方が値段が高いと思うんですけど、パースって何百年の歴史があるアパートのほうが値段が高くて。そうやって大事にしてるのを感じて素敵だなって思ったんですね。そのときに、日本で生まれて日本に住んでるのに、日本のことを愛して貢献してきたっけ?って考えて、仕事のしかたを変えようと思いました。実は海外取材がちょっと飽きたっていうのもあるんですけど(笑)」


今の暮らしは全然地味じゃない 移住してみたら私は生きやすくなった

都会にいたときのことを振り返ると、今のほうが生きやすいとSHIORIさんは話します。

「あのころはとにかくがむしゃらに働いてたし、夜中まで仕事もしてました。みんな忙しそうにしてるから自分も忙しくしなきゃとか思ってたし、みんなキラキラしててそれが正解だと思ってました。でも、今のほうが生きやすいし、自然のなかでストレスなく過ごすのって全然地味じゃなくて、いい人生の過ごし方だと思ってますぼーっとしてるのも正解かな〜みたいな(笑)

さらに、SHIORIさんは移住を重く捉えなくていいと言います。

「コロナ禍の今だからこそ、1人で仕事ができる人とか、地方にやりたいことがあれば移住をすすめます。ワーケーション(※3)もいろんな企業が取り組んでて、もっと地方で仕事がしやすい環境になるだろうし、都会でストレス感じてる人とか、今の仕事にこだわりがなければ地方に1回来てみたらどうかな?って思います。もしだめなら戻ってもいいと思いますし。」

※3…ワーク(仕事)とバケーション(休暇)を合わせた造語。詳しくはこちら

さらに、旅好きな人ほど移住は楽しいかもしれないとのこと。

旅だけじゃわからない魅力があるし、住んでみないとわからないこともたくさんありますね。旅の延長線上にワーケーションがあると思うし、そういうライフスタイルに憧れる人は移住してみたほうがいいかな〜と思います。」


【編集後記】

コロナ禍で旅に行けなくなったSHIORIさんにとって、移住という選択はごく自然なものだったように思いました。そんなSHIORIさんだからこそ聞けた「旅に行けない今だからこそ、日々の暮らしを大切にしたい。」この言葉がずっと耳に残っています。先行きが見えない世の中ですが、まずはひと呼吸つき、SHIORIさんのストーリーから受けた感情をありのまま感じてみてください。

トラベルライターSHIORI(しおり)

トラベルライターとしてTV、雑誌、webメディア等で活動中。2020年に長野へ移住し、2021年に第一子を出産。ライターとして活動する傍、観光系PR事業「TROVATORE」の代表も務める。「旅を通して綺麗を磨く」をモットーに、現代女性のストレスを解消する旅をリサーチしている。

ブログ トラベルライターSHIORIの女子旅ブログ*美TRIP
instagram @traveler_s23

投稿者プロフィール

宮川周平
宮川周平
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“愛をわかちあう瞬間を増やしたい”をモットーに、執筆・キャリア教育・海外ボランティアなどやってます。

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