農家の日常を体験し「当たり前」の大切さに気づいた旅〜cocostay体験者インタビュー

cocostayを通して地方に旅をした人に実施するインタビュー第一弾。記念すべき最初の主役は都内でフリーランスのデザイナーをしているMoeさんです。今回Moeさんは長野県上田市武石で農業と民泊業を営んでいる小林さんのお宅に旅をしました。一泊二日の旅を通して小林さんとさまざまな会話をしたMoeさんが語る旅の良さや思い出とは?

今回インタビューした人はこんな人!

フリーランスデザイナー、Moeさん(東京都武蔵村山市出身、26歳)
短大を卒業後、「どこかに就職しないといけない」と思い就職するも、職場の人間関係が原因で休職することに。その後数ヶ月のブランクを経て、療育という障がいを持つ子どもの教育の仕事に就きました。働く過程で保育士の資格を取得し、主任に就任するも留学したいと思う気持ちが忘れられず、退職。オペアというホームステイをしながら現地の子どもたちのお世話をする留学制度を利用してアメリカへ渡航しました。

一人旅が趣味というMoeさん。きっかけは22歳の時に初めての海外として行った韓国。それ以来海外旅行の虜になり、アジアを中心に一人旅をしていたそうです。仕事を辞めてアメリカに単身渡ることができたのも、一人旅で養った度胸のおかげで「どうにかなる」という気持ちがあったので飛び込めたそうです。

もともとMoeさんは、商品などを見たときにその商品のデザインを思わず見てしまう傾向にあったと言います。アメリカ滞在中に新型コロナウイルスの影響でロックダウンになり、家にいる時間が増えたため、空いた時間を活用して絵を描き始め、そこからツールを活用して絵を描くまでに至りました。

オペアを終えたあと日本に帰国した際に、せっかくなら英語を使った仕事に就こうと思ったもののデザイナーになりたいという夢をあきらめることができず、フリーランスのデザイナーとなり現在に至ります。


今回Moeさんが宿泊したのはこんなところ!

長野県上田市武石で農家をしている小林さんのお宅。武石地域は美ヶ原の裾野に広がるのどかな田園地帯です。静かな場所でのんびりしたい、農作業をやってみたいという方におすすめの地域です。

宿泊しようと思ったきっかけは?

宿泊先の農家さん自身に興味があったから。80歳近いけれどバリバリ働いてやりたいことを追求してやっている人がいると聞いて、「会いに行きたいな」と思う気持ちが強かった。


ーー今回利用した宿泊先はどんなところでしたか?

古民家という感じでリビングルームからお庭が見えて、そこに花が咲いていたり木があったりしました。そこを見ながら小林さんの話を聞いていたときになぜか涙が出てしまったんです笑。多分小林さんのお話って直接訴えかけてきている感がすごくあるからですね。
恥ずかしいけどティッシュで拭くとバレるから上を向いていました笑。

思わず出てしまった涙。その理由とは?

ーー(泣いてしまったのは)小林さんの話術によってでしょうか?

実際に行って思ったのは、小林さんの語彙力が本当にすごいということです。私は、考えることはあってもそれをうまく表現できなくてすごくモヤモヤしてしまうんです。それを小林さんが代弁してくれるというか、思っていることをうまく表現される方なので、「あ、私はそれが言いたかったんだ」ってストンと胸に落ちてくる感じがしました。

例えば、ジャガイモを植えたときに、同じ日に同じタイミングで植えても葉っぱの生え方とか、育ち方が全然違うんですね。「差があるけどみんな別々の成長の仕方をするし、それが普通だから。本来人間もそうなんだけど、みんな型にハマった生き方をしているでしょ」って、そんな話をしてくれるんですよ。それは小さい時の私にすごく聞かせたいって思いましたね。今聞いても(心が)浄化されますが、小さい時って学校の世界しか知らないから、人と違うかもって思ったときにちょっと辛かったりしたんです。でも(小林さんの)そういう話を聞いて心が癒されました。

何かに対するものの考え方って、自分が経験してきたことを踏まえて成長する過程でどんどん変わっていくものだと思いますが、小林さんの価値観をお話ししてくれたときに、話が深くてちゃんと物事を考えて生きていらっしゃる方なんだなと思い、そうなりたいなって思いました。
ただ生きているって感じではなくて目的をもって生きている感じが、小林さん自身がそうおっしゃっていたわけではないですがなぜかわかるんです。それは直接
会わないとわからないことだったので、本当に行ってよかったと思っています。

もっと穏やかに流れに沿って生きてもいいのかなって思えるようになったのと、あと野菜がとても美味しくて、今まで結構味をつけて食べたりしていたのですが、野菜本来の味に興味が出てきたりして結構食生活や好みも変わりました。最近は小林さんに教わった梅とお味噌と砂糖のドレッシングを作って、生のお野菜につけて食べたりしています。

みんな違ってみんないい

ーー今回の旅をする前と後で何か自分の心境に変化はありましたか?

「みんな違ってみんないい」という言葉がふとしたときに(小林さんから)ポンと出てくるんです。私も前のお仕事で発達に遅れがある子どもたちに教える仕事をしていて、「みんな違ってみんないいんだよ」って教えたかったんです、ずっと。ただ言葉で伝えるだけではなくて、例えばジャガイモのお話みたいにちゃんと目に見える形で教えた方がわかりやすいじゃないですか。そういうアプローチの仕方があるんだというのは今回の旅ですごく勉強になったので、もし前のお仕事を今していたらそうやって教えてあげることができたな、とか結構過去を振り返って色々考えることが多くなりました。話していただいたことが(自分自身の)色々な経験につながると思いました。

田んぼの水面に映る夕焼け

ーー今回の旅で1番思い出に残っていることについて教えてください。

夕方、小林さんと私たちで車に乗っていたときに夕焼けがすごく綺麗で、でもみんな携帯をもっていなかったので家まで車で戻ってダッシュでカメラを取ってダッシュで車に戻って、バーって走って、田んぼの水面に夕陽が反射してとても綺麗だったのでそのスポットまで車を飛ばして行ったのがすごく楽しかったなと思いました笑。
ゆっくり空を見るってあまりしてこなかったとも思いました。もしかしたら日常的にこんな綺麗な空があったのかもしれないけど、気づけていなかったというか。あとは自然の音、例えば蛙が鳴いていたりとか、そういう音は普段聞けないのですごく印象に残っていますね。

Moeさんにとっての今回の旅とは・・・

今回の旅を通して自分にとって当たり前にしていることが、他人にとっては珍しく、価値のあるものになる可能性もあるのだと気づきました。
今回、普段触れることの少ない自然があふれる場所で農泊を体験させていただき、小林さんの日常の暮らしを体感させていただきました。
農泊での体験は、私にとっては非日常的な暮らしで、自分にとっての当たり前は、他人にとっては価値のあるものに変化するのかもしれないな、と思うようになりました。
例えば私は一人旅に出かけることが好きで、時間とお金に余裕があれば1人ですぐに海外に出かけるような性格なのですが、こういった私にとって当たり前にしてきたことが、他の人にとっては珍しく、刺激的に映るのかもしれない、と自分の自信にもつながる旅になりました。