静岡県に移住するメリット・デメリットは?仕事・子育て・生活・補助金の手引書

本州のほぼ真ん中に位置している富士の国・静岡県。日本最高峰のシンボルが魅せる壮麗な山容や太平洋に面したパノラマ、人々が躍動する街並みや文化などが支持され、希望の移住先としてトップに輝いたエリアです。一県で何役もこなしてしまう“ちょうどよい住み心地”がテーマカラーの静岡県ですが、そんな気になる静岡県での「仕事・子育て・生活・補助金」におけるメリットやデメリットとは?移住後の生活に失敗・後悔がないよう、最新の情報に触れながら夢のあるイメージを膨らませてみてください。

静岡県の基礎知識

総人口361万3,694人(全国10位)
面積7,777k㎡(全国13位)
地域区分東部:富士市、沼津市、御殿場市、富士宮市、裾野市、駿東郡、三島市、伊東市、熱海市、下田市、伊豆市、伊豆の国市、賀茂郡、田方郡中部:静岡市、島田市、焼津市、藤枝市、牧之原市、榛原郡西部:浜松市、磐田市、掛川市、袋井市、湖西市、御前崎市、菊川市、周智郡
気候区分全般:湿潤亜熱帯気候山間部~内陸部:温暖な内陸性気候伊豆半島~沿岸部:温暖な海洋性気候
有感地震回数(過去10年間)121回(全国平均:372回)
平均寿命男性:80.95歳(全国平均:80.77歳)女性:87.10歳(全国平均:87.01歳)
合計特殊出生率1.44(全国平均:1.36)
県内総生産17兆2,775億円(全国10位)
事業所数17万2,031事業所(全国10位)
持ち家率67.7%(全国平均:62.3%)
1人当たりの県民所得338万8千円(全国4位)
1人1日当たりのごみ排出量886g(全国平均:918g)
観光客数7862万人(全国7位)

(出典:「ふじのくに静岡県公式HP」http://toukei.pref.shizuoka.jp/chosa/02-030/

「富士山のお膝もと」で豊かに活気づく静岡県

静岡県は、都心に近い熱海や伊豆などの屈指の観光地から、摩天楼の映える中部エリアまでを有する“ちょうどよい真ん中”の街。いずれの地域にも、街並みの中に山・海・河・湖などの自然が共存しており、アウトドアやマリンスポーツの聖地が数多くあります。世界遺産である富士山を仰ぎながら、「日本一の茶どころ」としての趣ある街づくりが人々に親しまれてきました。東西交通の要所でもある静岡県は、東海道の名残を遺しているのも魅力の一つ。名将ゆかりの浜松城や掛川城などの文化財をはじめ、小さな史跡や原風景を随所に見ることができます。大都市の間で栄えた“中ぐらいの地域力”を活かし、利便性の高いライフスタイルを送ることができるのが強みです。

静岡県に移住・定住したくなる5大メリット

1. 人気移住地トップの安心感がある

ふるさと回帰支援センターが発表した「2020年移住希望地域ランキング」によると、静岡県が全ての世代から支持され、窓口相談で1位となりました(出典:https://www.furusatokaiki.net/wp/wp-content/uploads/2021/03/webnews_20210309_furusato_ranking2020.pdf)。

移住のタイミングとしては「今すぐ(1年未満)」の選択肢が急増しており、首都圏に近い地方都市の静岡県に希望が集中した形です。30代以上の約15%が静岡県を候補地とした背景には、「仕事」や「心豊かさ」などの選択肢が、互いにイメージとして結び付いていることが挙げられます。

2. 暮らしのプランにゆとりが持てる

総務省の「2019年小売物価統計調査」によれば、静岡県の物価指数は「総合」で98.5と全国で19番目に低く、東京都の104.7に比べて約6.3%下回っています。(出典:https://www.stat.go.jp/data/kouri/kouzou/pdf/g_2019.pdf

とりわけ「住居」は、東京都と比較して約32.4%も低い状況。平均床面積あたりの土地付き注文住宅費を見ると、首都圏の5,162万円(105.8㎡)に対して東海圏は4,412万円(114.8㎡)と、費用を抑えながらより広い家を建てることができます。(出典:住宅金融支援機構「2020年度フラット35利用者調査」https://www.jhf.go.jp/files/400357456.pdf

3.「プチ田舎めし」に舌鼓が打てる

お茶の一大産地となった静岡県は、気候や地勢に恵まれているのが利点です。富士山の良質な湧き水や黒潮が流入する駿河湾の恩恵により、山や海の幸が豊富に出揃っています。駿河湾直送の魚介類をはじめ、地元生産者の新鮮な農産物が県内のスーパーで入手可能。商圏の広さから品揃えが多く、暮らしや健康の質を高めることにも繋がります。

4.「富士のふもとライフ」に唯一無二の価値がある

霊峰・富士をはじめ、3,000m峰の南アルプスの山々を擁している静岡県。県内の多くが山岳信仰やパワースポットの対象になっているほか、文学・絵画などの文化創造の地としても知られています。日本一の山裾に抱かれる特権と、アウトドアやスポーツが身近になっている風土も、静岡県のマウンテンライフならではの魅力です。

5.「ものづくりの県」として産業に強い

「産業のデパート」と評される静岡県は、技術者や発明家の住む工業地帯に属します。東部を中心に二輪自動車や楽器などの製造業が盛んで、ヤマハやスズキなどのトップメーカーが世界に躍進している地でもあります。一方、焼津市・静岡市などの中部地域は、水産業や食品加工業の有力企業が数多く構えている中心地です。旅館数が全国1位の伊豆周辺でも、観光客の増加から絶えず雇用の機会が生み出されています。

移住・定住はどこがベスト?静岡県内の地域特色

【大都市圏エリア】静岡市・浜松市

静岡県の政令指定都市として機能している静岡市と浜松市。県庁所在地でもある静岡市と、浜松市の中区や東区にあたる「まちなかエリア」は、都市機能が集まった中枢部です。JR東海道本線を利用すると静岡駅から東京、同じく富士山静岡空港までは約1時間のアクセスとなります。大型商業施設や医療機関が充実している一方で、車を持たない生活も可能です。

【高原都市エリア】御殿場市

平均標高500mの山間部らしい冷涼な気候から、夏場は避暑地や保養地として重宝されてきた地域です。富士山・箱根観光の中継地点や、東京2020五輪のロードレース開催会場としての役割も担ってきました。都会に近い田舎のため暮らしの充実度が高く、のびのびと活気のある子育てをしたい方におすすめ。

【ちょうどよい田舎エリア】三島市・富士市・焼津市・御前崎市

東京までの通勤時間が1時間未満の三島市や、県内3位の人口規模から成る富士市。静岡駅から10分少々と交通至便な焼津市に、海産物の宝庫である最南端の御前崎市など。どこかに都会感を挟んでいながらも、里山風景や清流、潮の香り、灯台などの懐かしさをくすぐられるのが共通点です。

【がっつり田舎エリア】沼津市・伊豆市・富士宮市・磐田市・藤枝市・牧之原市

山中から海沿いまで、好みに応じた田舎暮らしを実現できる地域です。他産業から農業に転じる方のための育成事業があるほか、市民農園や自給自足を選択しやすい環境にあります。市街地までは車で1時間ほど掛かる場合もありますが、地域のコミュニティーが住みよい社会を形作っている印象です。こだわりのカントリーライフの中で、満天の星空や蛍の鳴き声などの醍醐味が尽きることはありません。

移住前に知っておきたい静岡県の生活情報

移住までの初期ステップとしては、次のような点を踏むことが大切になってきます。

  • 移住の目的や希望条件を明らかにしておくこと
  • 移住者の生の声を聞くこと
  • お試しでの移住体験や短期滞在をしてみること
  • 情報収集をしながら候補地を絞っていくこと

本項目では静岡県での生活環境を知るにあたって、仕事や子育てなどの現状を説明しています。移住後に後悔することがないよう、体験談や参考サイトもご覧の上、メリット・デメリットを把握しておいてください。

気象の特性

静岡県は全国で最も標高差が大きく、山間部や平野部、半島沿岸部などによって異なる気象特性が見られます。

平年値(1991~2020年)の主な要素と極値

年・月ごとの要素御前崎市(西部)静岡市(中部)三島市(東部)
最低気温(1月の平年値)3.3度2.1度0.8度
最高気温(8月の平年値)29.8度31.3度31.8度
最低気温の極小値-5.4度-6.8度-9.8度
最高気温の極大値36.7度38.7度37.4度
年間降水量(平年値)2094.8mm2327.3mm1868.2mm
年間日照時間(平年値)2272.8時間2151.5時間2003.2時間
平均風速(平年値)4.9 m/s(西)2.2 m/s(北東)2.3 m/s(東南東)
歴代1位の最大風速(風向)39.1 m/s(南南西)24.1 m/s(西南西)29.8 m/s(東南東)
歴代1位の最大瞬間風速(風向)50.5 m/s(東北東)40.0 m/s(南東)44.0 m/s((東)

(出典:気象庁HP「過去の気象データ検索」https://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/index.php)

大局的に見ると、南からの湿った空気を受けるため、穏やかで温暖な気候を形成しています。四季の変化にメリハリがあり、盛夏はうだるような酷暑の日もありますが、冬場は過ごしやすい冬晴れが中心です。日照時間は、東京都の約1900時間に比べて200時間ほど長く、年間降水量も東京都より500mm以上多くなっています。山間部を中心に大雨、沿岸部では強風に見舞われやすい地形特性があり、時に大きな災害が発生するリスクもあります。移住にあたっては、防災面での正しい知識と、いざという時の対処法を身に着けておくことが大切です。

あわせてチェック:
静岡県公式HP「総合防災アプリ 静岡県防災」https://www.pref.shizuoka.jp/bousai/application.html
静岡県のハザードマップhttps://www.pref.shizuoka.jp/kinkyu/180730hazardmap.html

交通の概要

都市部の主要な交通網は、以下を参照してください。

鉄道東海道新幹線(東京~新大阪)JR東海道本線(熱海~新所原)
道路新東名高速道路(御殿場JCT~豊田東JCT)東名高速道路(東京IC~小牧IC)国道1号(東京日本橋~大阪市梅田新道)
空路富士山静岡空港
航路駿河湾フェリー(清水港~土肥港)

静岡県内ではJR主要駅の周辺地域を除き、生活に車があった方が便利です。「都道府県別の自家用乗用車の普及状況(2020年)」(出典:https://www.airia.or.jp/publish/file/r5c6pv000000u7cl-att/r5c6pv000000u7d0.pdf)によれば、静岡県は1世帯当たり1.389台と、1家に1台の枠を越えている傾向にあります。大人1人につき1台を所有した方が、通勤や買い物などのコスパが高まるケースも考えられます。

あわせてチェック:
静岡県公式HP「便利な交通アクセス」http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-530/yuui/access.html

雇用情勢と働き方

2021年6月における静岡県の有効求人倍率は1.14倍であり、全国平均1.13倍を上回っています。(出典:「職業安定業務統計資料」https://jsite.mhlw.go.jp/shizuoka-roudoukyoku/content/contents/000928537.pdf)生産額の多い製造業を中心に、新規求人数が大幅なプラス比となったことが要因です。

一般新規求人数の多い5産業(対前年同月比)製造業(51.5%増)卸売・小売業(18.2%増)医療・福祉(13.6%増)サービス業(27.4%増)建設業(4.8%増)

現状は静岡市などの中部や、下田市周辺といった物流の多い街での就職率が上向いています。が、アフターコロナにおける経済の動きを見据え、引き続き場所に捕われない働き方を模索していく必要があるでしょう。テレワークを中心とした新しい仕事様式から、オフィス兼自宅を念頭とした移住も増えてきています。移住前と同じ仕事を引き継げるかどうか、移住と就職を同時に行えるかどうかの事前確認も必須です。また、Uターン・Iターンでの就職をサポートしてくれる専門機関に相談する手もあります。

あわせてチェック:
静岡県公式HP「しずおか就職net」https://www.koyou.pref.shizuoka.jp/
静岡U・Iターン就職サポートセンターhttps://shizuoka-ui.resv.jp/

子育て・教育体制

2021年4月時点での静岡県内の待機児童数は61人と、子育て支援プランを開始して以来最少となっています。(出典:http://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-130/documents/20210401taiki.pdf)保育の場という概念が拡張しており、赤ちゃんから大人、お年寄りまでが交流する環境が多く、子育てがしやすい環境といえます。静岡県内では各市町でさまざまな保育サービスや教育支援がありますが、ママを応援してくれる取り組みも盛んです。豊かな自然と支援制度に守られながら、のびのびとした子育てを可能とします。また、学校教育では「有徳の人」づくりが推進されており、全く新しい学びの場や修学支援新制度を活用することができます。

あわせてチェック:
ゆとりすと静岡「子育て・教育」https://iju.pref.shizuoka.jp/information/educate.html
静岡県公式HP「学校教育」http://www.pref.shizuoka.jp/a_content/3_01.html

住まい・不動産

住環境の良し悪しを確かめるためには、静岡県内のお試し滞在用住居を利用してみる方法があります。また家の新築やリフォームについては、静岡県公式HP「住まいづくり支援ガイド」を、物件探しをする場合は、宅地建物取引業組合HPや空き家バンクを確認してください。

あわせてチェック:
ゆとりすと静岡「お試し住宅一覧」https://iju.pref.shizuoka.jp/measure/503.html
静岡県公式HP「住まいづくり支援ガイド」http://www.pref.shizuoka.jp/kenmin/km-310a/garden/sumai_guide.html
しずおかだんちーずhttps://www.pref.shizuoka.jp/kenmin/km-330/dantizu.html
スマイミー静岡https://www.shizuoka.fudohsan.jp/
ラビーネット不動産https://rabbynet.zennichi.or.jp/
空き家バンクしずおかhttps://akiya-bank.shizuoka.fudohsan.jp/

地域の交流・イベント

静岡県内では朝市やお祭りのほか、地域住民と触れ合えるイベントが定期的に開催されます。大都市圏のような派手さはありませんが、かえって仲良くなりやすく、堅実な人間関係を築くことが可能です。移住者を対象とした交流会などにも参加してみると、生活上の楽しみや安心感を得られるかもしれません。

あわせてチェック:
静岡県公式HP「イベントお祭り情報」http://www.pref.shizuoka.jp/sangyou/sa-420/guide/event.html

移住支援制度・補助金

移住に関する支援制度は、ゆとりすと静岡HPの「支援制度」から各地域・目的別に検索することができます。なお、静岡市では2022年1月にかけて「静岡市移住・就業補助金」の対象枠を拡大中です。東京都から静岡市に移住の後、就職や起業をした場合に補助金(2人以上の世帯100万円、単身60万円)が支給されます。

あわせてチェック:
ゆとりすと静岡「支援制度」https://iju.pref.shizuoka.jp/support.html
静岡市公式HP「静岡市移住・就業補助金について」https://www.city.shizuoka.lg.jp/553_000067.html

まとめ

移住希望地トップの静岡県は、大自然の恵みや暮らしの豊かさを享受できる理想の街。深く根を下ろしたくなるような“いいとこ取り”の生活環境が人気です。全世代が羨む静岡県への移住により、新たな可能性の扉が開かれることを願ってやみません。

投稿者プロフィール

A mass
A mass
あたらしい気象災害時代を幸せに生きるため、健康・くらし・生き方を包括的に説く気象予報士。民間気象情報会社を退職後、文筆業に転身し、誌面などで幅広く執筆活動を行う。

関連記事

  1. 長野県への移住の魅力とは?失敗したくない人のための移住準備ガイド

  2. 日本の原風景や文化を大切にする地域で丁寧な暮らしを!岐阜への移住ガイド

  3. 都会と田舎のいいとこ取り!医療福祉や子育て支援が手厚い富山に「ぜひ、こられ」